自分の体と能力をよく知ろう。


  2006年2月16日、期せずして雨。横浜国際競技場にある横浜市スポーツ医科学センターへ行ってきました。



 ここでは、1998年より、マラソン大会で起こった突然死などの悲劇的ともいえるスポーツによる健康障害事例の対策として、個々の体力を知り、応じた健康づくりメニューのアドバイスを行ういわばスポーツ版人間ドックSPS(スポーツプログラムサービス)を一般に有料で公開しています。


 対象は、5、60歳からスポーツを健康づくりとして始める一般者から、実業団や学生チーム、プロ、県代表、国代表選手までと幅広い人たちが利用している施設です。



 1.どんなことをやるの

 大きくわけて2つです。一つはいわゆる健康診断<メディカルチェック>。もう一つは体力測定<フィットネスチェック>です。大企業の福利厚生でそんなの毎年やってるよっておっしゃる人もいらっしゃるでしょう。私もそうです。でも中身が濃いので受けた印象は、全然違います。

<メディカルチェック>
 1)問診表
 あらかじめ封書で送られた問診表に自分の健康に関する情報を記入します。
 ・かかっている病気、生活習慣病なども
 ・たばこ、お酒の摂取頻度、量
 ・アレルギー体質か?
 ・病気、怪我の履歴
 ・食習慣の細かなチェック
 などなど細かな内容は右の表に書かれています。

 この食習慣の細かなチェックがあとの問診と日常生活へのアドバイスに大きく寄与しますのでちゃんと細かく記入します。たとえばご飯は一日3食×100gか、それとも一日一食×300gか?とか乳製品、野菜、果物、お菓子、お肉、魚、揚げ物などなどの項目が多岐に亘っています。 
                                                  プログラムの内容です。
                                                               クリックすれば大きくなります。       
 
2)尿・血液検査
 血圧、貧血、肝障害、血清脂質、血糖、尿酸値の評価です。スポーツ選手は筋肉の破壊が激しいので高尿酸性となりますが尿検査で蛋白、糖などが出ていなければ問題ない、ということもおしえてくれたり、貧血気味となりますがこれも水分を良く飲まなければ成らないスポーツマンでは、スポーツ性貧血として問題ない、っということも教えてくれます。

 3)X線検査
 胸部レントゲンです。

 4)骨年齢
 右足のくるぶしの骨を超音波測定法により測定し、実年齢平均値、骨年齢(自分は10代)を教えてくれます。

 5)呼吸機能検査
 どれだけの空気量をとりこめるのかを測る肺活量とどれだけ早く吐き出せるかを計る%肺活量を測定してくれます。

 6)安静時心電図
 安静時の心電図です。スポーツを行っている人はスポーツマン心臓といわれる異常な動きをしてしまうのでその旨を先生にいえば安心です。

 7)運動負荷試験
 自転車(エルゴメーター)をこぎながら運動をしたときの心臓の動きを心電図と心拍数の測定値より評価します。運動しても大丈夫か?どのくらいの負荷が適正か?を6)の検査結果とともに評価します。

<フィットネステスト>
 1)形態計測
 体重・体脂肪・身長・皮下脂肪厚を測定します。皮下脂肪厚は、看護婦さんが、ヘソの下、横っ腹、肩甲骨下、上腕部の皮の厚みをノギスで挟んで測定してくれます。自分は、これで肩甲骨や背中の脂肪が一番厚いことが解りました。他の部位は全て5mm以下でマラソンランナーの基準以下となっているのに背中だけは7mmと厚いのです。原因は自分の姿勢が猫背であることです。ちゃんと胸を張っている姿勢だと自然と肩甲骨周りの動きがよくなり脂肪がなくなるのだそうです。これは大きな課題ね。っと看護婦さんが言いました。○。

 2)柔軟性
 立位体前屈です。無理すると腹筋がつりますよ。

 3)バランス
 片足で立ってどれだけ振れるかを見ます。片足づつ、上下、左右、前後どのように振れるのかそれは同年齢と比較して多いのか少ないのか見ます。

                                                                       体前屈計測器

 4)全身反応時間                                            
 パット光が見えた瞬間、両足を上げるまでに何秒かかったかを測定します。
 緊張していると体が動かなくなるし、ボーっとしているとあっという間に光が出ます。
 




 5)握力測定
 これがビックリするほど落ちてました。工場勤務時にはもっとあったのですが。使わないと筋力はあっという間におちるといういい証拠です。

 6)両脚伸展パワー
 体重分の負荷がかかったフットプレートに両脚でできる限り速く・強く蹴りだし、そのときに発揮されたパワーを測定します。蹴りだした速度とフットプレートにかけた負荷の掛け算で求めたパワーを体重で割ったものが健脚度が出ます。これを評価するのですが、唯一、自分が平均レベル以下だったのがこの値です。これでは、距離が短い短距離になればなるほど、他のひとより劣るはずです。


 7)動的筋力
 右足の膝を中心に膝下の脚を一挙に伸ばして続けて曲げるという動作を2往復繰り返します。膝を伸ばす動作は太ももの前の筋肉を使い、膝下を曲げるときは太ももの裏側・ハムストリングを使います。膝下の動きは太ももの力強さで決まるのです。これはマラソン選手にもおおいに必要な要素です。



 8)運動負荷テスト
 心電図測定の項目で述べましたが、自転車をこいで計る試験です。フィットネスとしては、持久力を判定します。テストが始まるとペダルの負荷が徐々に増え、それとともに心拍数も上昇します。全身持久力に優れている人ほど負荷の増加に対する心拍数の増加は小さくてすみます。自分の場合はこれをしないで、特別試験で乳酸値と走るスピードの関係を測定しました。

 <競技力向上(特別試験)>(別途有料)
 競技力を向上させたい人、競技を止めていたが復活させたい人のために専門競技力の測定を行います。その他、フォームチェックと栄養学指導などがしてもらえます。

 自分の場合は、持久力の測定です。走る速度を徐々に上げていき、3分走ったあと耳から血を採って乳酸値を測定するのです。血液の中には筋肉を働かせた後に複製される乳酸が存在します。この乳酸は、ある速度で分解され血液中の乳酸濃度が上昇しないようにコントロールされます。この状態は有酸素運動領域と呼ばれるもので持久力が維持できる運動強度を示します。一方、運動負荷がある領域を越えると血液中の乳酸値が急激に上昇し、持久力を保てなくなるのです。これを無酸素性作業閾値といい、この境目がフルマラソンで走れる最高速度と言われています。

 自分の場合、この測定の他、走るフォームによりどの程度この乳酸濃度が変わるか測定してもらうことにしました。また、自分がフォームを変えたと思った走り方を映像で自分が比較・確認できることも狙いました。

 右がそのときのビデオです。最初に通常走っているフォームで意識せずに走り、次にキャサリンヌデレバを意識したフォームでkm4分の速度で10分間走りました。そのあと、血液中の乳酸値濃度を測ると、2番目に走ったときの乳酸値のほうが低く出ました。っということはフォームを変えて走った方が楽に走れるっという結果です。先生もこんなにはっきりとフォームが変わるとは思わなかった。っと言っておられました。自分も見てあまりの違いにびっくり、っというか通常はあんなんだったの?ってガッカリ。改良フォームの方で走ると目線も若干高くなっていることにビックリ。。それだけ前傾しているってことですね。

 また、一般的なアドバイスとしてランニングフォームのチェックをしてもらいました。

 この競技力向上編は何をするか?何を評価するか?得られる結果は、それをどう評価するか?を事前にSPSの先生に相談して決めるのです。その分、クリエイティブで試験をしていても自主的なプログラムなので、試験中ワクワクさせてくれます。


 2.自分がためになったと思うこと

 普通の健康診断ではなく、スポーツを専門とした健康診断と体力測定によって、何が自分のためになったのか?ここで纏めておきます。

 1)走るフォームの中で指摘を受けた事。
  高速ランニングマシン(トレッドミル)を走って、後ろからと横から見てもらい自分のランニングフォームの中での課題を指摘してもらいました。指摘は、
 ・腰の動きがほとんどなく、その代わりに上半身をひねってしまう。もっと股関節や腰周りを柔らかくして腰を使えるようにした 方が良い。
 ・足が外側から着地している。あまりにひどい外側からの着地なので捻挫するのではないかと心配するくらい。これは、若干 フォームがO脚になっているので、これを改善するのと衝撃を受けた脚の外側をよくケアして故障から守る事が大事。
  
  と指摘を受けました。

 これらに対して、有効なストレッチの方法を写真つきの資料で説明していただきそのコピーももらいました。


 2)乳酸値測定で自分の走力向上用メニューのアドバイスを受けた事。
 走る速度と乳酸値の関係をグラフにしていただきました。これからすると自分の乳酸値が高まるスピードは232m/分だそうです。この限界値をなるべく速くするためには、
 ・普段から乳酸値が2mmmol/L位に上がる速度での練習を取り入れる事。
 ・レース前には乳酸値が3mmmol/L位にまで上がる速度で4,50分間走る練習を取り入れる事。

 だそうです。自分は、乳酸値が2mmmol/Lにあがる速度が232m/分(km4分19秒)、3mmmol/Lにあがる速度が248mmmol/L(km4分2秒)なので、その速度で練習すればいいのでしょう。そういう意味ではkm4分で10kmのレペティションを今自分がレース前のトレーニングに入れているのは理に叶っていたといえるでしょう。また、普段では、コントロールランやベースアップ走で4分20秒程度までの練習をしたり、たまには4分20秒のペース走を1時間位で行うのも良いのかもしれません。
 いずれにしても、来期からの練習方法としてよい目安がみつかった事は、大きな収穫です。また、この乳酸値と速度の関係を来年度も測定して自分のパフオーマンスが向上しているのかどうかをみる良い指標にもなた事は大きな収穫です。

 3)食事内容を栄養バランスの面でアドバイスを受けた事。
 運動をしているという前提で自分が今摂っている食事内容が足りているのかどうかを評価してもらいました。評価項目は、
<栄養成分の基準に対する自分の充足率>
 栄養成分別に自分が取っている食事からどの項目が足りていないか栄養士の先生が計算してくれたものを教えてくれました。
 ・エネルギー    100%
 ・たんぱく質    168%  
 ・脂質         98%
 ・炭水化物     133%
 ・カルシウム     83%
 ・鉄         137% 
 ・ビタミンA     243%
 ・ビタミンB1     69%
 ・ビタミンB2     76%
 ・ビタミンC     169%
 ・食物繊維      86%

 カルシウムは少ないという判定ですが自分が問診表に書いた魚の摂り方を切り身と誤解して計算したようです。実際はサバ、さんま、いわしなどの魚を缶詰で食べていると話すとそれなら絶対足りているというお話でした。さらに自分はカルシウムとマグネシウムをサプリメントで摂ってると話すと不足していることはないということだそうです。
 またビタミンB群の摂取と食物繊維の不足については、問診表で書いたのはお米ですが実際は、白米ではなく発芽米
と玄米に雑穀を加えているのでそれならビタミンB群、食物繊維の不足は解消し、他のミネラルやエネルギーも1.5倍に増えて理想的であるとの話をもらいました。

 ちなみにどんな食事をしているかというと下記のように、牛乳や乳製品、肉類、油を一切摂らないようにしているのが自分の食事の特徴です。それでも上記のように必要な栄養は摂れるのですね。

<食品摂取項目別、自分の充足率>
 ・魚介類        132%  一日2食はお魚を食べているという情報からです。切り身として計算してみたらしいのです                     が実際は、缶詰をそのまま一個食べてるので理想的な食べ方だそうです。
 ・肉類          18%  たまに寮の朝ご飯として若干ハムと肉が入ります。
 ・卵           171%  卵は一日2個でも自分の尿酸値が正常なのでOKだそうです。
 ・大豆製品       150% 納豆を一日2パック食べてます。
 ・乳・乳製品       10% 牛乳は一切摂りません。むしろ摂り過ぎるとたんぱく質過剰となって尿酸値が上がるそうで                     す。また、アジア系人種はもともと牛乳を消化する酵素がないので胃腸に悪く、結果として必                    要な栄養素を流してしまう場合もあり、飲まなくてもカルシウム、たんぱく質が摂れる人は無                    理に飲まない方がいいという話しをしてもらいました。自分も以前からそれを知ってたので、                     やっぱり正しかったとホットしたんです。
 ・野菜類         39%  野菜ジュースでも果汁を混ぜているものは効果が半減するそうです。特に色の薄い野菜(                     大根、玉葱、ねぎ、キャベツ、レタス、白菜、茄子、など)は白血球を強くする働きがあり風邪                    の予防になるそうです。ビタミンB群が少ないといわれたのはこの野菜を摂らないことが原因                    でした。ビタミンB群は玄米や雑穀から摂れますが、こういった効果は、やっぱり野菜を食べ                    ないといけないなーっということで、良質な野菜ジュースか、野菜の煮物を自分でつくる必要                    があります。
 ・果物          294%  バナナを一本、レモンを一個毎日食べてます。あとオレンジジュースを一杯ね。
 ・穀類           61%  ご飯を毎食お茶碗に一杯でこ評価です。白米として計算してます。
 ・芋類           14% 芋は特にこれがないといけないということはないそうです。芋類には鉄、ビタミンC、糖質が                     含まれておりこれらの栄養が充足されていれば、あとに芋に残された効果は満腹感だけだ                     そうです。
 ・油脂類           0% 揚げ物や炒め物などを一切口にしないと問診表で書きました。それでも栄養別で見ると資                     質の充足率は98%もありました。如何に普通に食べると必要以上に油を摂りすぎるかがわ                    かります。サバやさんまの缶詰を食べたり、納豆を食べるだけでも結構、油脂分が摂れるの                    です。但し、油脂分の効果としては、ホルモンバランスを保ってくれたり、さばやさんまに含ま                    れるDHCという血流を促し、頭を良くする働きもあるのでないがしろにしてはいけません。
                     このためには、普通の植物油はだめで、オリーブオイル、ごま、ナッツが良いそうです。
                    自分のようにあまり食事に手をかけたくない人には、ナッツがお勧めです。でも摂りすぎると                    悪玉コレステロールが増え、動脈硬化になるので一日10粒だ目安だそうです。ナッツであ                     ればピーナッツ、アーモンド、くるみ、ナツメ、などなどなんでも良いそうです。 
 ・きのこ・海藻・種実  229% 出汁昆布をお米とともに焚いて食べています。出汁も出てご飯がおいしくなります。あとは                     寮のお味噌汁に結構きのこが入っているので不足することはありません。

  
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