心拍計トレーニング

 心拍計トレーニングでめざす

楽しいジョギング教室ストーリー編 Top Page
                 大阪教育大学市民講座にて


    <装着方法>
 心拍計はベルト式のトランスミッターと腕時計型の心拍計(POLARS610i型)からなっています。

 ベルト式トランスミッターを水でぬらしてから胸の位置(アンダーバスト)に地肌へ装着します。走って振動が加わったときに変な値を出してしまうのでちょっときつめがいいでしょう。ハンカチを濡らしてトランスミッターの導通性改善とずれ防止の一石二鳥の効果が得られます。
                        机の上に並んでいる黒いベルトが 胸につけるトランスミッター

     <心拍計との通信開始>
 装着が完了し、心拍計とトランスミッターとの通信を行います。胸に付けたトランスミッターが心拍数を測定し、腕につけた心拍計へ無線で送ります。
 このとき心拍計を持った人が近くに複数人いると違う人のトランスミッターからの信号を拾ってしまうので、この通信を行うときは人が近くに居ないところまで行って行う必要があります。   
 ちゃんと通信ができると自分の心拍数が表示されハートマークが( )内で点灯します。ときたま、( )の表示がなくハートマークだけが表示されるときがありますがこれはエラーですので、もう一回やり直してください。

<使い方>
 「楽しいジョギング教室」で借用させて頂いた心拍計はPOLAR製S610iというもので、高性能なものです。自分はM32型を持っています。これは、リアルタイムデータをPCにダウンロードする機能などはありませんが、ストップウォッチと練習中の平均心拍数、消費カロリーとその内の脂肪消費率を表示してくれ、機能としては充分、満足しているものです。

  このM32もS610iも測定開始は表示パネルの下のボタンを押すだけこれをおせば、ストップウォッチと心拍数の累積計算を始めます。 

  


<心拍計のあれこれ>
 ちなみにPOLAR(フィンランド製)の心拍計は、トランスミッター付きで8,400円〜60,900円までとなっており、昔より手ごろな値段になってきました。やっぱりストップウォッチ付きのものが使い勝手が良いだろうがそれでも1万円代で買えます。 
 トランスミッターも3種類ほどありますが布製のベルトで電池が自分で返られるトランスミターを選べるタイプをオススメします。そうしないと電池がなくなったら5000円もするトランスミットベルトは使い捨てになってしまいます。
   いろいろな心拍計の使い勝手とおすすめ
 それでも、S610iはラップ表示とそのラップの平均心拍数を表示してくれる  のでスグレものです。そんでも、M32が2つ買えるもんナー。


<心拍計トレーニングの効果>

 いままで運動負荷と自分の走力は、走る速度と距離だけでしか表せませんでした。よって、ヒーハーいうまでできるだけ速く走ることとばかり続けていたような気がします。

 
心拍計を使って、自分の心肺機能(酸素摂取能力)がどれだけあるのか、長時間運動を持続するためにはどのくらいの運動負荷が最大値となるかなどを心拍数を測定することにより、明確にできることを知りました。これは自分にとってかなり画期的なことでした。
 心拍数と走る速度は比例関係にありますが、あるスピード以上から比例関係が崩れます。そのときのスピードが自分のHRT(Heart Rate Threshold)です。
 このHRTを測定する方法がコンコーニテストであり、イタリアのコンコーニ博士が1982年に発見した理論です。このHRTはATに近い値として提唱されましたが、実際はATはHRTより若干遅い速度となると言われています。

 ATを知る方法がいくつかありますのでここで紹介します。

  (いずれの方法もランニングスピードを徐々に上げるテストです。)
  • 乳酸閾値 LT(Lactate Threshold)
     耳などに針をさして採血を行い血中の乳酸を測定します。
  • 換気閾値 VT(Ventilatory Threshold)
     ガスマスクをして走りながら吐く息の分析を行う。
  • 心拍性作業閾値 HRT(Heart Rate Threshold)
     心拍数の増加が鈍る点を見つける方法。

 血液測定とかガスマスクでの測定などはほとんど個人的な測定はムリなわけで心拍計を使ったHRT測定方法が我々市民ランナーレベルで唯一実用的な方法と言えるでしょう。

 そのテストで得られるlことで判ることは、

1.心肺機能としてみたフルマラソンのレースタイム(今の実力)
2.フォームや筋力UPなどの練習成果を定量化して確認できる。
3.夏、冬など環境要因による走行能力への影響度を明確にできる。
 温度、天候などによりレース目標タイムを修正することに使える。
4.走り始めと35km過ぎにおける運動能力への影響を定量化してレースペース配分を決める。ま  た、長距離走に対する体力の向上度がわかる。

 などなど。そのほか心拍計そのものの効果(使い道)としては、

@レース時に自分の心拍数を確認しながら無理ない範囲での最高スピードで走ることができる。
A脂肪を優先的に燃やす運動負荷を持続して最も効果的に痩せられる。心拍計を持たないときはついつい、運動強度を上げてしまい、血中の糖分を使って、やつれるし、痩せられないし、という日々がありました。
    
この他、まだまだ心拍計の効果があると思います。今後もその効果をこのサイトでお伝えしたいと思います。


<心拍計トレーニング>

 最大心拍数は、自分の発揮できる走力の最大値ということになり、その何割の強度で走るかによって、運動の目的が異なります。それを定量的に把握して、効率的かつ合理的に練習する方法が心拍計トレーニングです。

 有酸素運動が健康目的的な運動で最大心拍数の6割から7割となり、競技目的の運動は最大心拍数の85%以上となり無酸素性運動となります。
        
 ただし、これらの心拍数とトレーニング目的はあくまで目安であり、楽しく走るという大目的からは、逸脱した考え方になりがちとなるため、あまりこれにとらわれない方がよいでしょう。(by佐藤先生


     ランナーに必要な肉体的2大能力
      1)最大酸素摂取量 VOT
      2)無酸素性作業閾値 AT

 この2つが大きければ速くマラソンを走れる人となります。VOTは天井と呼ばれ、20歳を大きく過ぎた我々には、もはや改善できることは考えない方が良いでしょう。ただし、ATは人によっては改善される余地は残っており、これを改善する最大心拍数の85%以上を超える練習を効果的に行えばタイム向上もありえるわけです。 


     心拍トレーニングによるフルマラソンに向けた練習計画

 一般的な心拍数毎に適したトレーニングメニューを表してみます。
      
       目標心拍数           練習例
      160拍/分以上         5〜10kmのレペティション
      160拍/分(90%HRmax)  20〜40kmの持続走
      145〜160拍/分        コントロールラン
      145拍/分(80%HRmax)   起伏走
      130〜145拍/分        マラニック
      130拍/分(70%HRmax)   LSD
      130拍/分未満         ウオーキング

 もちろん安静時の心拍数が45と低い人も居れば75と高い人もいるので、この目標心拍数はあくまで参考例です。ただし、フルマラソンをめざす練習をするならば1年間をかけて下から順番にこなしていけば、かなりタイム向上も期待できるでしょう。

     走行速度と心拍数の関係をはかってみよう

 走行速度と心拍数の関係を一度測っておくと、心拍数をみるだけでロードで知らない土地を走ってもどのくらいのスピードで走っているのかがわかり練習計画が立てやすいです。

 400mトラックなど距離が正確にわかるグランドを使って、600mから1000mの距離を「とてもゆっくり」と「普通」と「やや速く」の3段階のスピードで走り、そのときのタイムと平均心拍数を測定します。
               
               「とてもゆっくり」ペースのスタート

 この時に注意したいのは、ペースを変えないことです。最後に追い込みをかけたり、あんまりスピードを上げて走ると目標の距離を走り終えても心拍数は上昇の途中であっては正確な測定ができません。
               
               「やや速い」ペースのフィニッシュ
 休む間隔は、心拍計を見て拍数が100以下に下がっていればOK。数分は休んで回復するでしょう。
 自分の測定結果をグラフにしてみました。この回帰直線が右下へ行くほど「速く走れる心臓の持ち主」と言うことになり、練習を重ねればそうなるはずです。   
 この値が自分の今の実力なので今後、老化を練習によっていかに止められるか、またはタイムマシーンのように時間をさかのぼって若返れるか?楽しみでもあります。

   有酸素運動と無酸素運動の違い

  運動には下記の2つがあり、それぞれ消耗する栄養素が異なります。
     
運動強度        消費栄養素

無酸素運動      血中の炭水化物(糖質)を分解してエネルギーとする。
有酸素運動      体内の脂肪、糖質を分解してエネルギーとする。
  人間がフルマラソンのように長時間運動を行う場合、有酸素運動に近い運動強度(スピード)で走らないと血中のグリコーゲンがなくなってバテてしまうのです。ちなみに体重が60kgの人がフルマラソンを走るときに必要なエネルギーは2500キロカロリー、血液中にあるエネルギーは最大1400キロカロリーですから残りをスペシャルドリンクやエイドで吸収するか体内の脂肪を使うしかないのです。
 また、糖質を分解してグリコーゲンにするときに乳酸を複製してしまい、筋肉中に溜まってしまい動けなくなってしまうのです。

 よって、有酸素運動の最速のスピードでフルマラソンを走ればその人の最高タイムが得られることになります。


   無酸素性作業閾値 AT

 有酸素運動の最高スピードとはどうすればみつかるのでしょうか?

 そこで、無酸素性作業閾値AT(Anaerobic Threshold)という概念があります。
 ランニングスピードを徐々に上げていくと血中乳酸濃度が上昇するところがあり、そのスピードをATと考えます。


   心拍数と運動能力の関係

 それぞれ違う実力の人たちが、5分/kmのペースで走ったときにどのくらいの心拍数になるか
統計をとってみると、速く走れる人は、同じスピードで走った場合、比較的心拍数が低いことが言えるそうです。

 ということは、心拍計で走る速度と心拍数の関係を測定しておくと、自分の能力が向上しているのか否かわかることになりますね。

 ただし、夏の心拍数は、冬の心拍数より数拍/分くらいは高くなるので、同じ気候で走った場合を比較しないと誤るおそれがあります。。

 まあそうだよね。夏なんか歩くだけでも汗が出てきてはあはあ言っちゃう人もいるもんね。

 
ここで言いたいのは、心拍計によってのトレーニングを行うことによって、夏や冬など環境の変化に左右されずに、心肺機能への負荷を一定に保つトレーニングができるということです。


   コンコーニテスト

 さて、下の図がコンコーニテストで得られるデータを横軸がスピードで縦軸が心拍数で表したものです。

 コンコーニテストとはイタリアのコンコーニ博士らが発明したものでスピ−ドを上げていくとスピードと心拍数の関係に変曲点がみつかりその心拍数が無酸素性作業閾値ATであると発表したものです。(1982年)

          コンコーニテストの結果

        

 その後の研究や経験からATはこの変曲点より下のゾーンあることがいえそうでこの値を心拍性作業閾値(HRT)として区別するようにしました。HRTのスピードは経験的に10kmのレースペースに相当するといわれています。

 
     コンコーニテストをやってみよう

 コンコーニテストは、400mトラックを一列になって、先頭のペースメーカーについて走ります。ペースは50秒/100mからスタートして100m毎に1〜2秒/100mづつ速くしていきます。そのときの心拍数を記録して速度との関係が一定でなくなったときの速度を見出すのです。


 スピードが速くなってくると当然先頭のペースメーカーについていけなくなります。その時点で勝手に列から抜けるのですが、できたら抜ける前に全速力でもう一段スピードを上げてから抜けるのがよい抜け方です。そこで最大心拍数がわかるからだと思います。

        
     コンコーニテストのスタート                  速度が上がってきた状態

 走り初めからペースメークに失敗、45秒/100mから入ってしまい、そのままスピードを上げずに400mまで走りました。そこから徐々にスピードを上げって行ったのですが、初めから1500m位までは長く感じました。

 30秒/100mを超えるくらいからどんどんとスピードが上がっていく感じがして、あっという間に終わった感じです。

 自分としては「よくそこまでついていったな」という感想です。予想では18〜20秒/100mまでがせいぜいだろうと思っていましたから。しかし、ショックだったのは、最大心拍数でした。走り終わった直後が最大心拍数と思っていましたから、すぐに心拍計を見たのですが、表示は169拍/分を指しており、自分の天井の低さに愕然としたのです。


 
− 最大心拍数と運動能力の関係 -
 
 持続的に運動ができる能力を心拍数と走るスピードの関係としてAT(無酸素性作業閾値)があることを学びました。このATはLTと同じと言われています。

 LT(乳酸性作業閾値)とは筋肉中の乳酸の除去スピードが生成速度についていけなくなる走行スピード(この心拍数に相当する運動強度)の事を意味します。

 このLTは実践ランニング読本 
―ビギナー&市民ランナーのための「理論」と「雑学」からだ読本シリーズ
に載っている以下の式で簡易的に得られます。

 LT強度=(最大心拍数-安静心拍数)×0.75〜0.9+安静時心拍数
      ≒5〜10kmのレースペース

 ずいぶん、引っ張りましたが上の式が示すように最大心拍数が高い人、最大と安静時に差がある人が乳酸を筋肉中に貯まってしまう走行スピードを速くすることができるのです。

 このLTを高めるトレーニングはあるのですが、いくらがんばっても上げられない限界値が最大心拍数ということです。

 ということで自分の限界は心拍数で表すと169だということです。この値を7/24に測定した走スピードと心拍数の関係式にあてはめると私の走スピードの限界値は約21秒/100m、5kmレースで17分30秒が最高とは言っても、コンコーニテストのようにHRTがありますから絶対それより速く走れるわけもなく、ということは今の自分のベスト(2003.3.駿府マラソン)が18分57秒なので、本当に限界に近いところにきているなと思うわけです。

 自分には改善の余地がないのか?と思って愕然としたのです。計算して確かめてみましょう。自分の安静時の心拍数は57ですから

  現在のLT=(169-57)×0.9+57=157.8拍/分

  この強度に匹敵するスピードは289m/分
  5kmに直すと19分30秒です。お、遅い・・・遅くなっている。

 ここで課題が2つみつかりました。

 1.本当にこの最大心拍数は改善できないのか?
 2.ランニング効率を向上させて同じ心拍数でももっと速く走れるようになれないか?

 という課題です。特に2番目の課題はこれからフルマラソンに挑戦する私にとって不可欠ですし、改善する余地はまだまだいっぱいあると思っています。1.の課題は、20歳までの人なら可能だが、44歳を目の前にしたおっさんには無理!という一般論への挑戦になります。
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