栄養学でめざす

 
 39歳で初めて市民マラソンの5kmレースに出たときは体重は68kg、4ヶ月のインターバルトレーニングのみ行ってそれまでは全然走っていませんでした。それでもタイムは過去ベスト2の19分3秒と初めてのレースにしては好記録といっていいのか、その後の練習が甘いのか、ずーっと引っかかっているのです。

 とくに驚いたのがその初レースの10ヶ月後に行った5kmのレースです。なんと20分20秒もかかって、とくに後半はヘロヘロ状態でした。練習は今までに無いくらい積んできたのに・・・。その時、体の変調に気づいたんです。栄養がナイヨーって悲鳴を上げているんです。ですんでヘロヘロになったんですね。

 いまでも、時々思い出しますが、初めてのレースの時は、最後の1kmは辛くて辛くて、時々止まりたくなるところまで追い込み、そして本当に一回止まったんです。それでもまた走り出して最後にはダッシュまでして。走り終えた後の脱力感と頭がボーとした感覚は、それ以降のレースでは、まだ味わったことがありません。なんであんなに追い込めたんでしょうか?それはそれはエネルギッシュなレースでした。

 そんなエネルギーをもう一度手に入れたい。あの時と今とで何が違うんだろう?年齢は当たりだけど。その他にも一杯あるはずだと栄養学を勉強することにしました。

                 
栄養を取り込むメカニズム

 まず基本的にどうやってエネルギーができるのか理解しましょう。

 栄養素の取り込み方

 炭水化物(1g−4キロカロリー)
  ・でんぷん⇒数万−数十万のブドウ糖
  ・ショ糖  ⇒ブドウ糖+果糖
  ・乳酸   ⇒ブドウ糖+ガラクトークス

糖質が分解され血中に取り入れられたブドウ糖は次の様な経路でエネルギー源として使われるか、グリコーゲンとして貯蔵される。

a)エネルギー供給が十分な場合はグリコーゲンとして肝臓に貯蔵
b)肝臓以外の組織に運ばれエネルギー源として使われれるか筋肉中にグリコーゲンとして貯蔵

c)エネルギー供給が十分でグリコーゲンの貯蔵も十分な場合は、過剰な糖質は脂肪に転換される。

グリコーゲンの貯蔵量 

  肝臓250〜300キロカロリー
  筋肉400〜500キロカロリー
 タンパク質(1g−4キロカロリー)
  ・タンパク質⇒ペプトン⇒ポリペプチド⇒アミノ酸

蛋白質はアミノ酸に分解され肝臓に運ばれ

a)酵素、ホルモン等を作るため蛋白質に合成
b)血中に放出され体の別の組織で使われる
c)過剰なアミノ酸はエネルギーとして使用される


 脂質(1g−9キロカロリー)
  ・飽和脂肪酸
  
・一価不飽和脂肪酸 ⇒脂肪酸+グリセリン
  ・多価不飽和脂肪酸 アラキドン酸
                  オメガ6−リノール酸
                  オメガ3−リノレン

 脂肪は脂肪酸とグリセロールに分解され脂肪酸が

a)肝臓に運ばれエネルギーとして使用されるか中性脂肪として貯蔵
b)リポタンパクとなって他の組織に運ばれエネルギーとして使用
c)脂肪細胞に取り込まれ中性脂肪として貯蔵

 中性脂肪貯蔵量 140000キロカロリー


栄養素をエネルギーに変換するメカニズム
 
 
 糖質、脂肪、蛋白質が分解され細胞質又は、ミトコンドリアの中で酸化分解されアデノシン三リン酸(ATP)が生成される。このATPがアデノシンニリン酸(ADP)に分解される時に強いエネルギーが放出され、このエネルギーにより人間の体が動く。このATPの生成には次の3つの方法がある。

(1)クレアチン系
クレアチン燐酸が分解される時のエネルギーによりADPからATPに再合成される。これは運動の初めの段階で行われるが10秒程度しか続かない。

(2)乳酸系(無酸素系エネルギー代謝)
 血中に酸素が十分に取り込まれない状態の時に沢山のエネルギーが必要な場合は、無酸素の状態でミトコンドリアの外でATPが生成される。ATPが生成されるスピードは非常に早いがブドウ糖1単位で2単位のATPしか生成されず効率が悪い。乳酸系は不完全燃焼のため筋肉に乳酸が蓄積されるので長くは持続することは出来ない。
 グリコーゲン⇒グルコース⇒ピルピン酸⇒アセチルcoAと直線的に分解されていき、クエン酸回路に入り、この回路1サイクル進むことにATPが12単位生成される。但し、このクエン酸が疲労などで不足すると行き場を失って、ピルビン酸は前に進むことができなくなる。そして、今度は無酸素の状態で分解(嫌気性分解)をはじめ、乳酸を生成する。また、クエン酸サイクルに入れなかったアセチルCoAは脂肪合成へと進んでいく。
つまり、クエン酸サイクルが廻らないと、乳酸が増加し疲労がたまる

(3)有酸素系
 酸素が十分に供給されるとミトコンドリアのクエン酸回路の中で、ブドウ糖、脂肪酸アミノ酸が酸化されATPが生成される。ブドウ糖1単位で36〜38単位のATPが、脂肪酸1単位で80〜200単位のATPが生成され効率が高い。有酸素エネルギー代謝は完全燃焼なので最終的には二酸化炭素と水に分解され乳酸は生じない。

 
 よって疲れなくより長く運動を持続するためには、たっぷりの酸素グルコース(栄養素)と正常なミトコンドリア活動を促すクエン酸が必要ということになります。またこのクエン酸回路を動かす酵素としてタンパク質、ビタミンB1、B2、B12、ビタミンCが必要です。


何を食べれば良いか?
 
エネルギー3大要素の割合
タンパク質:脂質:糖質=10〜15:20〜25:60〜70
  一日の摂取量目安(2500kcalの場合) 脂質;60g 糖質:ご飯とするとお茶碗6〜7杯
1)タンパク質
 たんぱく質の材料には、体の中でつくることができないもの(必須アミノ酸)もあるため、私たちは、毎日食べ物からたんぱく質を補給しなくてはなりません。体に効率よく利用されるたんぱく質(良質のたんぱく質)がたくさん含まれている主な食べ物には、以下のものがあります。

肉類(牛、豚、鶏、ハムなど)
魚介類(魚、小魚、貝、ねり製品など)
卵類(鶏卵、うずら卵など)
大豆および大豆製品(大豆、納豆、とうふなど)
牛乳および乳製品(牛乳、ヨーグルト、チーズなど)


2)脂質
 脂質は体内で1gあたり9kcalと三大栄養素のうち、最も高いエネルギーになります。脂質には体の中でつくることのできない必須脂肪酸が含まれており、体の細胞膜の成分やホルモンの材料などになっています。不足すると、発育の障害や油脂に溶ける脂溶性ビタミン(ビタミンA・D・E・Kなど)の不足に繋がります。

3)糖質
 糖質は体の主要なエネルギー源です。消化・吸収されて血液といっしょに全身をめぐり、体の中で1gあたり4kcalのエネルギーになります。特に脳では血液中の糖質(ブドウ糖)だけがエネルギー源なので、極端に糖質が不足すると意識障害などがおこることがあります(通常はこのようなことはおこりません)。また糖質は、同じエネルギー源でも脂質やたんぱく質と比べると、すばやく使えるという特長があります。

4)鉄
 体の中の鉄は、そのほとんどが血液中の赤血球をつくっているヘモグロビンという成分になっています。このヘモグロビンは、呼吸でとり込んだ酸素と結びつき、酸素を肺から体のすみずみまで運ぶという重要な働きをしています。

 鉄を豊富に含む食品は、レバー、魚、貝、大豆、緑黄色野菜、海草などたくさんあります。食品中の鉄には、肉、魚、レバーなどに含まれるヘム鉄と、野菜、海草、大豆など植物性食品に含まれる非ヘム鉄があります。非ヘム鉄の吸収効率は、ビタミンCや食肉などといっしょにとることで良くなることが知られています。

5)カルシウム
 カルシウムは、骨や歯などをつくっている栄養素です。大人の体には約1,200g存在し、その99%は骨と歯に、残りの1%が血液などの体液や筋肉などの組織にあります。この1%のカルシウムが、出血を止めたり、神経の働きや筋肉運動の活動に重要な役割をします。
 成人の摂取目安量は1日700 mgです。許容上限摂取量は2,500mgです。カルシウムたっぷりの食べ物は、牛乳、小魚、海草、大豆および大豆製品、緑黄色野菜などです。例えば牛乳コップ1杯(200 ml)には、約230 mgのカルシウムが含まれていて、1日の摂取目安量のおよそ1/3がとれます。
 
6)マグネシウム
 マグネシウムは、骨などの発育・形成のために、カルシウムとともに必要なミネラルです。カルシウムのほとんどが骨にあることは知られていますが、マグネシウムも60〜65%は骨に含まれています。また、マグネシウムは、神経の興奮を抑えたり、エネルギーをつくる助けや、血圧の維持にもかかわっています。

 アーモンドをはじめとする種実類、魚介類、海草類、野菜類、豆類などに多く含まれています。

7)ビタミンB1
 ビタミンBは、糖質からのエネルギー産生と、皮膚や粘膜の健康維持を助ける働きをします。不足すると糖質がうまくエネルギーにならないため、食欲がなくなったり、疲れやすい、だるいなど夏バテのような症状になります。
 成人の摂取目安量は1日1.0mgです。水溶性のため、とり過ぎの心配はありません。ビタミンBの多い食品は、穀類のはい芽(米ならヌカの部分)、豚肉、レバー、豆類などです。精白されていない米(はい芽米、玄米)を使うことや、麦ごはんにすることもひとつの方法です。

8)ビタミンB2
 ビタミンBは、主に皮膚や粘膜の健康維持を助ける働きをするビタミンで、体に糖質、脂質、たんぱく質の各栄養素が取り入れられて、不要になったものと入れかわる反応(代謝)にかかわっています。なかでも脂質の代謝に深く関係するので、脂質の摂取が多いほどビタミンBはたくさん必要になります。
 成人の摂取目安量は1日1.1mgです。水溶性のため、とり過ぎの心配はありません。ビタミンBは、レバー、卵、大豆、乳製品、葉菜類などに多く含まれています。水溶性のビタミンBは、熱には強いものの水や煮汁に流れ出てしまうので、洗いすぎないようにしたり、調理した煮汁ごと利用したいものです。

9)ビタミンB12
 ビタミンB12 は、葉酸とともに赤血球のヘモグロビンをつくるのを助けるビタミンです。また、脳からの指令を伝える神経の働きを正常に保つのにも役立っています。ビタミンB12 不足では、赤血球が減ったり、異常に巨大な赤血球ができてしまったりします。
 成人の摂取目安量は1日2.4μgです。極端な偏食でなければ不足もおこりません。ただし、胃の全摘をはじめ消化管切除などビタミンB12 の吸収に問題がある人、動物性食品をあまり食べない人、または菜食主義の人では、不足する可能性があるため注意が必要です。
 ビタミンB12 は、動物性食品に含まれています。特に、多く含んでいる食べ物は、魚介類やレバーなどです。


10)ビタミンC
 ビタミンCは、皮膚や粘膜の健康維持を助けるとともに、抗酸化作用を持っています。体の細胞を結ぶコラ‐ゲンというたんぱく質をつくるのにかかわっています。また、病気などいろいろなストレスへの抵抗力を強める働きのほか、ホルモンをつくったり、鉄の吸収をよくしたり、シミ、そばかすの原因(メラニン色素)を抑えたりもします。
 成人の摂取目安量は1日100mgです。不足すると、寒さや細菌に対する抵抗力が下がって、風邪などの病気にかかりやすくなったり、また、骨や歯の発育が不十分になったりします。ビタミンC欠乏で生じることで知られる壊血病は、コラーゲンがつくれないために細胞の間の結合がゆるんで、血管や関節が弱くなり、歯ぐきなど体の各所で出血がおこったり関節が痛んだりする病気です。
 ビタミンCたっぷりの食品は、果物(とくにかんきつ類やイチゴ)、野菜、いもなどです。ビタミンCは水に溶けやすく熱に弱いので、できるだけ新鮮な生で食べるのがよいことになります。


11)脂肪酸
 脂肪酸は食品中に含まれる脂質(脂質参照)の主な成分です。脂肪酸は、その構造によって、飽和脂肪酸(S)、一価不飽和脂肪酸(M)、多価不飽和脂肪酸(P)に分けられます。

 飽和脂肪酸(S)は、肉や乳製品をはじめとした動物性食品などに多く含まれている脂肪酸です。とり過ぎは、悪玉コレステロールや中性脂肪を増やし、動脈硬化をまねく原因のひとつになります。動物性脂質を摂取しすぎないことが大切です。
 一価不飽和脂肪酸(M)は、主に植物性の油脂のオリーブオイルや菜種油(キャノーラ油)に多く含まれるオレイン酸が代表的です。オレイン酸は、酸化されにくいことや、動脈硬化や心疾患をまねきにくい油の成分として知られています。
 多価不飽和脂肪酸(P)には、体の中でつくれないため食べ物からとらなければならない必須脂肪酸のリノール酸、α‐リノレン酸や、その他には、主に魚に多く含まれ、脳の発達や機能に関与したり、血液をさらさらにしたりするDHA、EPAなどがあります。

 体に必要な様々な働きをするこれら3種の脂肪酸をバランス良くとることが健康の維持・増進に大切です。厚生労働省では、S:M:P=3:4:3でとることをすすめています。このためには、肉や乳由来の動物性脂質に偏らないよう、魚の摂取や植物性の油脂での調理をこころがけましょう。


12)クエン酸
 クエン酸は体の中で作られるもので、通常、外部から摂取する必要は無いのですが、強度の強い運動などを行ったときには体の中のクエン酸が消失し疲労が溜まりやすくなります。これを外部から摂取することにより、すばやくグルコースからエネルギーを取り込みを筋肉に送り込むことができるのです。
 クエン酸を多く含む食品は、シークワーサー、レモン、オレンジ、ゆず、梅肉などがあります。スポーツの終わった直後にこれらのクエン酸をとるとともに糖質とタンパク質(アミノ酸)を摂取することで、筋肉中の乳酸発生を抑制してくれ、疲労回復を早めてくれます。

 このクエン酸を効果的に体内へ取り込む方法として、最近、自分はもろみ酢を飲んでいます。毎日、30ccだけですがこれをのむと、430mgのクエン酸とリンゴ酸、600mgの必須アミノ酸も同時に摂取でき、酢自体も身体に良いためいいんで内科医、と。


 親父殿が買ってくれた八重泉酒造さんのもろみ酢は、けっこう濃厚で効くー!って感じします。
八重泉酒造は品質にこだわるから、質を落としてまで大量生産をせず、本物の味を守り続けています。
    


自分なりの結論
 書き出しに、なぜ、自分は失速したのか?という問いに対して、自分で今まで走って、勉強して得た結論は栄養補給の速度論にある、と結論づけられます。
 自分が失速した5kmレースなどは典型的な無酸素閾値での運動となるため筋肉が求める栄養は、血液中にある糖分をグルコースとして使うサイクルでしか補給できません。同じエネルギー源でも多糖体や脂肪などを分解している暇はないのです。よって、走る前の自分の血液中にあるエネルギー源はすばやく吸収できるタイプの単糖体などがどれくらい占めていたかによって筋肉が欲するスピードで栄養を補給できるのです。
 従って、溜め込む栄養素の絶対量ではなくその質によるものだというのが5kmや10kmレース前に求められる栄養補給法だといえるでしょう。


フルマラソンなどに求められる栄養補給剤
 フルマラソンで消費するカロリーは、約2600kcalですが肝臓や血液中に蓄えられる糖類のエネルギーは、最大でも約1600キロカロリーしかありません。そこで30km過ぎからバテるという人の中にも、こういう栄養の枯渇が原因の一つと考えられます。

 そうしたらどういったものがいいのか?というと
 ・吸収が速いこと:普通の食事は食べてから1時間後に小腸から吸収が始まりますが、走り ながらではとうて い間に合いません。
 ・栄養が長持ちすること:糖類の中でも単糖体は吸収が速いのですが速すぎるため、一挙  に血糖値が上がって、インスリンを分泌、糖類を脂肪へと変えてしまうおそれがあるのと処 理スピードが速い分、血糖値がすぐに下がってしまい、栄養が長続きしません。
 ・高密度カロリー食品であること:全体重量が軽くて多くのカロリーを保有するもの。
 ・飲み込み易いもの:走りながらだから難なく取り込めるゼリー状かシロップ状のものがよい でしょう。自分も固形の棒タイプを試してみましたが、器官に入るはなかなか噛み砕けない  で呼吸のじゃまになりわで大変でした。
 ・自分で加工してもよいのですが、そのものにカロリーだけでなく、筋肉疲労回復などに効く  クエン酸などを含んだものがよいでしょう。

 ということでここではTOPテンとカーボショッツを紹介しておきます。

 カー−ボショッツへGO
★★★
 

 TOPテンへGO
★★★



番外編
 食べれば、パワーが得られる?ということではなく潜在能力を遺憾なく発揮するための備えとして、栄養学についてまとめましたが、やっぱり土台が無くちゃー走れません。
 酸素と栄養素を合成してエネルギーを作りだす機構のミトコンドリアは、ランニングすることで増加することが判っています。つまり「長い時間走ることによって脚ができる。」といわれているのは、一つにはこういった生態系の発達をうながし、長時間ランニング用の身体を作り上げることになるんです。
 「ゆっくり、走れば速くなる。」と、どこかの先生が言っていますが、無理しないでユックリ走る効果は下のような効果が期待できるのです。
 1.まず無理な負荷をかけないので持続できる。(3日坊主で終わらない)
 2.故障が少ない。
 3.筋肉中の細胞が長時間ランに耐えられる筋肉組織や栄養分解能力を備えられる。
 4.ゆっくり走るのでランイングフォームを矯正しやすい。

 初めは20分から、あとは、1ヶ月ごとに1.3倍の距離に伸ばせて行けば、あなたも8ヵ月後にはゆっくり約2時間走れるようになりますよ。 




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